Maixduino K210/RISC-V マイコンでメガドライブエミュレーターを動作させる

twitter を眺めていましたらスイッチサイエンスさんから、かねてより興味があった RISC-V SoC のマイコンボードが発売されていましたので買ってみました。 LCD 付きで 4000円くらいなり。 🙂

CPU クロック 400MHz(600MHz)・メモリー 6MB(8MB) とかなり高性能なマイコンですので、ESP32 では諦めていたメガドライブのエミュレーターを動作させることに hello world がてら挑戦し、まずは起動できました。やった〜。

まだ起動するだけのものですがソースコードを github にコミットしています。

https://github.com/h1romas4/maixduino-genplus

Genesis-Plus-GX をエミュレーターのコアとして使わせてもらい、YM2612/SN76489 もエミュレーションされていますので、I2S にサンプリングバッファを流せば音も発声すると思います。

ちょっと原因不明ですが、まだ特定の条件でプログラムがダウンしてしまうことがあるようです。要調査。 アライメント関係の不具合で修正することができました。

また ROM のサイズは 128K 〜 640K バイトのものであれば最初の malloc には成功して起動します。大きなものはスタックオーバーフローするかもです。1Mバイト(ソニック2 などの 8M ROM) 以上は残念ながらメモリー不足で初期の malloc で落ちてしまいます。

さて、この記事では Maixduino 及び K210/RISC-V の開発環境の構成と、製作中に気がついた事をメモがてらまとめてみます。

開発環境の構成

Maixduino は SoC として K210 を使った開発ボードです。 Maixduino が提供する開発環境及びライブラリーは Arduino コアとして提供されています。

インストールガイドとソースコード

PlatformIO で Sipeed MAIXDUINO の設定がありますので、おそらく導入はこれを使うのが一番簡単です。

Maixduino Arduino コアは、K210 SoC 提供元の Kendryte が提供する K210 SDK とツールチェインに依存しています。K210 の SDK は OS なしの standalone 版と FreeRTOS 版があります。 Arduino コアでは standalone 版を使っています。

Maixduino Arduino コアのドキュメントはありますが現在は書きかけっぽいです。ライブラリの example のソースコードを参照するのがよいと思います。

この記事のメガドライブのエミュレータープロジェクトでは、勉強がてら Maixduino の Arduino コアを使わずに直接 kendyte-standalone-sdk を使ってプログラミングしました。

SDK のサンプルが以下から参照できます。

また K210 プログラミングガイドやペリフェラルなどの資料は次からダウンロードできます。

環境の構築はツールチェイン類を PC 上に配置して、

SDK をダウンロードしてきて、src ディレクトリの下に自分のプロジェクトを作成し、cmake して make すればOKです。

詳しい手順が上記のサイトの Usage にあります。

メガドライブエミュレータープロジェクトでは、ビルドに使う SDK のバージョンを固定したかったため、SDK をおなかに抱える構成としています。ビルド手順なども以下に記載していますのでご参考まで。 🙂

製作中に気がついた点

箇条書きにて。

  • Maixduino は K210 SDK Demo で使われているボードとペリフェラルの構成が異なり、LCD と SD カードはそれぞれ SPI0 と SPI1 に割り当てられている。また LCD コントローラーも異なる。 Arduino コアを参考に移植しました
  • K210 は RISC-V * 2 と AI コアと呼ばれる 3コア構成。このうち AI コアを有効にすると 2MB SRAM が追加で使えるようになる。ここここを参考
  • static 領域をおく .bss 領域が大きくないため、エミュレーターの移植では大きな static を動的に malloc するように修正
  • それでもエミュコアがメモリー不足でしたので、使わない機能を disable できるようにコアのソースを修正してなんとか起動。
  • CPU のクロックは 400MHz が標準設定だが、600MHz まで上げることができる
  • いろいろやっているも先人の方がおられることに気がつく。 Quake や DOOM、MMD が動いてる!すごい!

ボード付属のカメラで画像認識なんかもできるようなので、引き続き遊んでみようと思います。 🙂

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というわけで「YM2612 + SN76489 メガドライブ音源を ESP32 で鳴らす (基板製作編)」です。この記事で使われているソースコードや結線などは github で公開しています。

https://github.com/h1romas4/esp32-genesis-player

esp32-genesis-player (work in progress)

ここまでブレッドボードでがんばってきましたが、回路もそろそろ良さそうかな…ということでプリント基板を注文してみました。

github のほうに結線は書いていましたが、オーディオブロックも入れて回路は次のようにしてみました。(素人がかいていますのでおかしな部分はご容赦ください…)

KiCAD にて作成です。この流れから基板を注文できるようガーバーデーターをつくりました。

いくつかミスっていたり課題がありますのでガーバーデーターは Rev.B の時にコミットしたいと思います。

注文したのは FusionPCB さんで送料込み 5枚 $12 くらいでした。自分の基板がこんなに簡単につくれるようになってよい時代です。 🙂

ゴールデンウィーク & 労働節にかぶってしまいましたのでちょっと遅れましたが、待つこと 2週間くらいで… キター。

早速部品をはんだ付けです。

どきどきしてマイコンにつなぐも鳴らなくてしょんぼり(ソフト側を間違ってました…)

てなわけで基板が無事動作をはじめましたので、予てからやってみたかった、古代祐三さんが公開されている MUCOM88 データーを再生してみました。

https://www.ancient.co.jp/~mucom88/

MUCOM88は、古代祐三が自ら開発した、NEC PC-8801mkⅡSR以降に搭載されたYM2203及びYM2608(サウンドボードⅡ)を対象とする楽曲制作用ツールです。

https://onitama.tv/mucom88/

2018年、OBSLive年末生放送内で発表された、MUCOM88 Windowsのページです。
このページで公開されているアーカイブ内に、MUCOM88 Windowsフルセット、及び古代祐三氏サンプル曲データが含まれています。


現在この基板用の制御プログラムは VGM データーを再生するものになっていますので、MUCOM データーを VGM データーに変換する mucomMD2vgm を使わせていただいております。

https://github.com/kuma4649/mucomMD2vgm

このツールは、ユーザーが作成したmucom形式のMMLファイルを元にVGMファイルを作成します。

自分の VGM パーサーでは PCM 再生系で未対応のコマンドがありましたので(hack ですが)いくつか処理を追加して github にコミットしています。

というわけで…

Original Music Data (BARE KNUCKLE 2 Go Straight)
Copyright : (C) Yuzo Koshiro
License : CC BY-NC-ND 4.0
Name : MUCOM88 Windows Sample Music Data
Version : Ver1.7a
https://www.ancient.co.jp/~mucom88/
https://onitama.tv/mucom88/

MUCOM VGM Convert
mucomMD2vgm
https://github.com/kuma4649/mucomMD2vgm

感動です…。いろいろ蘇ってきて泣きそうです…。

というわけで、基板の方ですが、マイコンからのノイズのってしまっていたり、痛恨のコネクターを誤ってハーフピッチにしてしまうミスがあったりしますので、もう少しいじりながら改良していきたいと思います。

また、この基板は M5Stack など ESP-WROOM-32 機と接続できますので、無線 LAN や Bluetooth を使って遠隔で演奏させたり、BLE-MIDI で MIDI 音源にすることも(メインメモリーが許せば)できるかもしれません。 😀

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というわけで「YM2612 + SN76489 メガドライブ音源を ESP32 で鳴らす (クロックジェネレーター編)」です。この記事で使われているソースコードや結線などは github で公開しています。

https://github.com/h1romas4/esp32-genesis-player

esp32-genesis-player (work in progress)

メガドライブの音源となっています YM2612 と SN76489 はそれぞれ 7.670453MHz と 3.579545MHz で動いていますが、3.579545MHz のクリスタルオシレーターの入手は容易であるものの、7.670453MHz みたことない。。

というわけでクロックジェネレーターを使うにあたって起きた顛末です。

LTC6904

最初に試したのは I2C で任意のクロックを設定できる LTC6904 で、YM2612 を鳴らしている海外勢の方々もよく使われているチップです。

LTC6904 データシートおよび製品情報 | アナログ・デバイセズ

シリアル・ポートでプログラム可能な1kHz~68MHz発振器

MSOP パッケージでしたので DIP 変換して動作させています。(老眼には厳しいはんだ付けでした。。。

I2C 的には ADR(4) でアドレスを 1bit 分設定できるので 2つまで同時にぶら下げることができます。 この機能を利用して YM と SN 用でふたつ接続しました。

このチップで最初につまずいたのが I2C による周波数の設定がうまくいったりいかなかったり… 具体的には I2C のコマンドが ACK が返ってこないことがあって原因が分からず。

I2C のプルアップ値などを変えたりいろいろためしていったところ、どうやら発振している間はコマンドが失敗することが多かったので OE(7) を L に落としてからコマンドを送ることで確実に受け付けるようになりました。

次にでた問題は I2C のコマンドは通るものの、クロック周波数が設定値にならないパターンです。

7.67MHz を設定するものの 8MHz くらいになったりで、、これについては最後まで原因不明。。電源を入れたりリセットしたりしているとうまくいくのですが、なにぶん 2こ接続しているので両方がぴたっと揃う確率が低く… テストしすぎて絶対音感に目覚めるところでした(目覚めない)

パスコンなどの入れ方が悪いのか?電源を変更してみよう?などいろいろ試行錯誤したのですが残念ながら安定させることができませんでした。

ちなみに Arduino 向けの LTC6904 ライブラリーを書いている方の ソースコード を見ていたところ次のようなコメントアウトを発見。いったん完全に電源を落としてから 100ms 待つというのが NECESSARY TO USE となっているので、もしかするとちょっと癖があるのかもしれません。

// NECESSARY TO USE
//#define pwrpin PORTC2
//#define gndpin PORTC3
//DDRC |= _BV(pwrpin) | _BV(gndpin);
//PORTC &=~ _BV(gndpin);
//PORTC |=  _BV(pwrpin);
//delay(100); // wait for things to stabilize
//Wire.begin();

Si5351A (AE-Si5351A-B)

次に試したのは秋月さんで売っている AE-Si5351A-B でこちらはうまく動きました。 🙂

LTC6904 同様に I2C で周波数を設定できるクロックジェネレーターになっています。残念ながら I2C アドレスはひとつに固定ですが、3ch 分のクロックを取り出すことができますので、YM と SN で 2ch 使っています。

クロックの設定方法が秋月さんの取扱説明書に記載されていますが、基本は PLL / Multisynth という式の割り算でほしいクロックをつくれば OK です。少数も使えますがなんとなく整数値で次のようにしています。

# 本当は PLL(4725) / Multisynth(616) で正確
YM2612(7.670453MHz)  PLL(675) / Multisynth(88) 
SN76489(3.579545MHz)PLL(630) / Multisynth(176) 

AE-Si5351A-B はリセット後などの操作でも安定して動作させられましたのでこちらを使うことにしました。

動作確認用に簡略化されていますが、LTC6904 と Si5351A とも esp-idf 用のソースコードを github においてあります。

以上、というわけで部品が定まりましたのでいよいよ次回は基板をつくっていきたいと思います。 🙂

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